研究概要 |
1.新規蛋白分泌装置を構成する蛋白因子の生化学的同定 申請者が同定した新規蛋白分泌装置の外膜蛋白因子Sovと複合体を形成している蛋白因子の同定を試みた。Porphyromonas gingivalisの生菌体を蛋白架橋在DSPで処理し、Sov蛋白を精製して、Sov蛋白と架橋した蛋白質をSDS-PAGE法で分画後、目的蛋白質のN末端のアミノ酸配列をエドマン法で解析した。しかし架橋された蛋白質バンドのアミノ酸配列は解析不能であった。これは、Sovの発現量が非常に低いことに起因すると考えられた。 2.新規蛋白分泌装置を構成する蛋白因子の遺伝学的同定 ジンジパインの分泌に必須であるSovやPorTと同様の特徴を有すると考えられる機能未同定蛋白をコードする遺伝子をゲノムデータベースから収集した。得られた候補遺伝子を一つ一つ挿入変異で破壊して、血液含有寒天培地での黒色色素産生性の消失を指標にスクリーニングを行った。その結果、ジンジパインの発現に必須である新規蛋白質PG27を新たに同定した。一次構造解析の結果、PG27蛋白は新規の膜蛋白質であると推定された。そこでPG27遺伝子の完全欠失株を構築して、その効果を検証した。すると、この欠失株はジンジパインの活性とジンジパインの分泌がほぼ完全に阻害されていることが明らかとなった。以上の結果、PG27蛋白は新規蛋白分泌装置の新規の蛋白因子の一つであることが示唆された。更に、ジンジパインの分泌に必須である蛋白因子Sov, PorT, PG27は全て新規の蛋白質であることから、ジンジパインの蛋白分泌系は既存の経路とは異なる新規の蛋白装置によって媒介されることが強く示唆された。
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