研究概要 |
Wntシグナルが幹細胞の自己複製を制御していることは、幹細胞研究の話題の中心の一つであり、歯髄形成過程におけるWntシグナル制御機構を時空的かつ詳細に解析している研究は国内外において見当たらない。近年、Wntシグナルに関与するシグナルの一つとしてPKCが同定され、歯髄においてTNF-αの発現を濃度依存的に誘導し、歯の形態形成に関与する因子として報告されている。 本年度は、各stageのマウス歯胚におけるbeta-cateninの遺伝子発現およびタンパク質局在の解析を行い、Wntシグナルの歯髄形成への関与を詳細に検討した。 胎生中期から新生仔のマウス頭部を4%PFA固定液中で一晩固定し、翌日サンプルの脱水作業を行い、使用直前まで-20℃で保存した。Bud stageからCap stageに相当するサンプルを用いて、Whole-mount in situ hybridizationを行った結果、beta-catenin遺伝子は上下顎の切歯歯胚および大臼歯歯胚において検出された。 また、抗体免疫染色を行った結果、beta-cateninは歯胚の全領域で検出された。特にエナメルノットの細胞質において強く検出され、さらにエナメルノット直下の歯髄間葉においては、核に強いシグナルの局在が検出された。 Bud stageからBell stageに相当する各歯胚において、outer dental epithelium, stellate reticulum, inner dental epithelium, dental papillaの4領域を指定し、RNAの抽出を行った。今後はリアルタイムPCRにより、beta-cateninおよびWnt遺伝子群の遺伝子発現解析を行い、歯髄形成過程におけるWntシグナル制御機構、特にWntシグナルの歯髄における高次血管構築への関与ならびにPKCの役割について解明する。
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