研究概要 |
成体幹細胞は正常組織ではゆっくりとしか分裂せず、DNA標識が比較的長期間残存すると言われている。本研究では、この様なLabel retaining cell (LRC)の歯周組織での分布や組織侵襲に対する動態を5-bromo-2'-dexyuridine (BrdU)の残存をマーカーとして追跡している。本年度は、このBrdU-LRCを分離・培養する方法について検討した。 メスで剥離したマウス臼歯歯根膜を培養皿に付着させた後out growthしてくる細胞、あるいは組織をcollagenase, dispase, trypsinなどの酵素処理することによって得られる細胞は、組織量に対して得られる細胞数が少なく、また増殖能が非常に低かった。一方、抜去した歯を直接collagenゲル中で培養すると、歯根膜(PDL)細胞は高い増殖能を維持できることが明らかとなった。マウス1匹分の全臼歯12本を約1カ月培養することにより10^6個以上のPDL細胞が得られた。 また、BrdUによるquenchingを指標とした蛍光染色によるBrdU-LRC分離法について検討した。予備検討としてCH3/10T1/2細胞を30μg/ml BrdUで標識後、trypsin処理により解離し、10μg/ml Hoechst33342(Hoe)で37℃、1時間染色した。その後、FACSを用いてHoeの蛍光強度の弱い細胞(Hoe-low)と強い細胞(Hoe-high)とに分画した後、各々スライドグラス上に塗抹固定し、BrdU免疫染色を行った結果、BrdU陽性細胞はHoe-lowにのみが見いだされたことから、Hoe蛍光のquenchingを指標としてFACSによるBrdU-LRCの濃縮分離が可能であることが示唆された。
|