本年度は、あらためて酸処理したHApブロック体の物性を評価したうえで、in vitro研究にてヒト骨膜(PO)細胞およびラット骨髄細胞(MSC)による3次元高密度培養を行ない、ヒト歯根膜(PDL)細胞の性状と比較した。さらに、in vivo動物実験において、これらの細胞を培養した人工骨をヌードマウス皮下に埋植し、それらの異所性骨形成活性を比較検証した。 1)分化誘導したヒトPDL細胞はHApブロック体内部の気孔にて、比較的多量の細胞外マトリックス(ECM)を産生し、細胞がその中に埋め込まれる状態を形成した。 2)この状態のHApブロック体は細胞のないブロックに比較して脆弱さが改善されていた。圧縮強度は酸処理によって1/5-1/10程度に低下するが、ECMの豊富な細胞を含むHApブロック体ではそれが2-3倍程度上昇した。 3)ヒトPDL細胞は入手が不定期なことから、凍結保存した継代数の高い細胞を使用したためか、in vitroにおいてはある程度の石灰化を誘導できたものの、動物実験では気孔内に典型的な類骨形成を認めなかった。 4)ラットMSCはin vitroでの増殖活性が低いものの、動物に埋植後は、事前の分化誘導の有無にかかわらず、気孔内にCa沈着を伴う典型的な類骨を形成した。 5)ヒトPO細胞は、ラットMSCに比較するとその活性は劣るものの、気孔内に未熟な類骨形成を誘導することができた。
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