研究概要 |
ヒスタミン(HA)は,H_3受容体(H_3R)を介して神経伝達物質の遊離を抑制することにより,HA神経系ばかりでなく,モノアミン神経系の神経活動も制御していると考えられている。しかし,これまでHAがモノアミントランスポーター輸送活性にも影響しているか否かに関する情報は少ない。そこで本研究では,モノアミン神経活動におけるHA関与の機構を解明する一端として,H_3Rおよびその関連物質によるノルアドレナリントランスポーター(NET)輸送活性に対する影響を検討した。 NET輸送活性の評価は,ラット脳シナプトソームおよびヒトNET1/ラットH_3R遺伝子導入COS-7細胞を用い,[^3H] noradrenalin取り込みをシンチレーションカウンターで測定することにより行った。 脳シナプトソームにおけるNET輸送活性は,HAおよびH_3R作動薬α-methylhistamine (α-MH)により用量依存的に抑制された。一方,H_3受容体拮抗薬thioperamide (Thi)により輸送活性は促進され,さらに,α-MHによる抑制はThiにより部分的に解除された。 また,NET1/H_3R遺伝子導入COS-7細胞において,フォルスコリンおよびH_3受容体リガンドの影響について検討した結果,NET輸送活性はフォルスコリンにより増加するとともに,脳シナプトソームと同様,α-MHにより有意な減少が,Thiにより有意な増加が認められた。 モノアミントランスポーターの輸送活性は,H_1受容体アンタゴニストにより抑制されることが報告されており,HA関連物質や受容体との関連が注目されるところである。しかし,受容体,特に,モノアミン神経終末からの神経伝達物質遊離を制御しているH_3Rの関わりについては未知の部分が多い。 H_3R関連物質を用いて得られた本検討の結果は,NET輸送活性制御にヒスタミンH_3受容体を介する機構が存在する可能性を示唆するものであると考えられる。
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