研究概要 |
1.CCN2遺伝子のmiR-18による特異的制御の検証と標的エレメントの解明:前年度までに本計画はほぼ完遂していたが、発展的研究として以下のような成果が得られた。まず、ヒト軟骨細胞様HCS-2/8細胞においては、miR-18aの強制導入はCCN2 mRNAの翻訳を抑制し、mRNA量そのものには影響を与えなかったのに対し、同様にCCN2を大量に産生している乳癌細胞株、MDA231細胞ではCCN2 mRNA量も低下させることが明かになった。この現象はmRNAの分解をmiR-18aが加速しているためと考えられるが、同じmiRNAでも異なった細胞内では、異なった作用機序で標的mRNAの転写後調節を行ないうることを示しており非常に興味深い。 2.miR-18の軟骨細胞分化における役割の解析:軟骨細胞形質発現に対するmiR-18aの役割を検討するため、miR-18aをHCS-2/8細胞に導入し、マーカー遺伝子の発現変動を評価したところ、成熟軟骨細胞形質を代表するaggrecan遺伝子に有意な低下がみられた。さらに成長板軟骨細胞の後期分化における役割の検討のため。発生過程のニワトリ胸骨から前肥大・肥大軟骨細胞と成熟軟骨細胞をそれぞれ分離し遺伝子発現パターンを比較解析したところ、miR-18、miR-19遺伝子群の発現に著変はみられなかった。したがってこれらmiRNAは軟骨細胞の分化過程においては、成熟形質獲得までの初期段階に重要な役割を果たすと考えられる。 3.軟骨細胞分化における、miR-18aを含む遺伝子クラスターによるCCNファミリー遺伝子制御の検証:ヒトmiR-18aを生むpri-miRNAはmiR-17,18a,19a,19b,19c,20,92を含み、そこから各々のpre-miRNAが生ずる。そこでCCNファミリー全メンバーmRNAに対し、in silicoで標的予測を行なった結果、上記pri-miRNAから生ずるmiRNAの制御を受ける可能性はむしろ低く、他種miRNAの制御下にあるとの予測結果を得た。今後研究を続ける上で貴重な情報である。
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