研究概要 |
rgpA遺伝子産物であるHGP44(720-1081aa)はN末端(720-818aa)には酸性アミノ酸が13個有るのに対して、塩基性アミノ酸は1個も存在していない。このN末端領域を20アミノ酸ずつ短くした変異蛋白を4種類作成した(740-1081aa,760-1081aa,780-1081aa,800-1O81aa)ところ赤血球凝集活性が消失した。これら4種類のN末端変異蛋白では細胞外基質タンパク質との結合も消失した(ELISA法で確認)。これら変異蛋白には-FEED-の配列も、PNPNPNPNPNP-の配列も存在するので、これらの配列よりN末端構造がより重要であると考えられる。HGP44による赤血球凝集活性に対する阻害の程度を調べたところ、末端にシアル酸が結合した2本のN型糖鎖のみを持つトランスフェリンは赤血球凝集を阻害できず、末端にシアル酸が結合した3本の枝分かれN型糖鎖と3本のO型糖鎖をもつフェツインには阻害効果がみられたが、シアル酸がはずれたアシアロフェツインでは、さらに阻害効果が増強した。またシアル酸が結合した1本のN型糖鎖と複数の0型糖鎖を持つグライコフォリンも凝集を阻害したが、アシアログライコフォリンの方がさらに凝集抑制効果が強くなった。糖鎖の数が多いほど、またN型よりも0型糖鎖の数が多いほど阻害効果が強いことから0型糖鎖との結合が考えられる。しかしいずれもシアル酸がはずれた糖蛋白が赤血球凝集を強く抑制したこととHGP44のN末端が凝集に必要であることを考えあわせると、N末の負の電荷を介して相手側と結合する可能性も考えられる。そのため負に荷電しているシアル酸がはずれた方が、より結合しやすくなるのではないかとも思われる。レクチンで赤血球表面の糖鎖構造を調べたところHGP44で凝集するヒト、モルモット、ニワトリの赤血球に有り、凝集しないウマ、ウシにはない糖鎖がGa1β1-4GlcNAcであることから、この糖鎖構造と結合する可能性もある。 フィブロネクチンの45kDaドメインとリコンビナント蛋白を用いたHGP44の結合解析から、RGD配列を含む領域との結合が強く見られ、糖鎖を介さない結合も考えられる。
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