研究概要 |
テトラヒドロビオプテリン(BH4)は一酸化窒素やモノアミン性神経伝達物質の生合成を制御する因子で,生体内のBH4濃度は神経機能,血管機能に重大な作用を及ぼす。筆者らはBH4生合成の律速酵素であるGTPシクロヒドロラーゼ1 (GCH)に内在性アンチセンスRNA (GCH naRNA)が存在することを見いだしその発現機構と生理的機能を研究している。 1) GCH naRNAとmRNAの同時定量:total RNA標品中のGCHセンスRNA (mRNA)とGCH naRNAを同時に測定するため,mRNAあるいはnaRNAとハイブリダイズする合成DNA(20-30塩基)を加えてハイブリッドを形成させた後,RNase H処理を行いmRNAあるいはnaRNAのどちらかを分解した後にリアルタイムRT-PCRを行う方法を検討している。添加する合成DNAの位置はPCRで用いるプライマー対の内部に設定する。 2) 内在性GCHnaRNAの5'末端:ラットGCH mRNAの構造(NM_024356)については1016塩基まで登録されているが,マウスGCHの完全長mRNAは2764塩基(NM_008102)である。マウスおよびラットGCHゲノムの配列よりラットGCH mRNAの完全長は2758塩基と推定される。5'RACE法によるGCH naRNAの5'末端分析の結果,mRNAのヌクレオチド位置2710, 2558, 2467, 2326に相当する4種の末端が得られた。短いものが掃いRNA鎖から分解されたものかどうか検討中である。 3) GCH mRNAは終止コドンが851-853の位置にあり異様に長い3'UTRを有する。この3'UTR部分に結合するmiRNAが存在すること,またGCH naRNAもこの部分に対応する配列を持つので,それらmiRNAのGCH naRNAに対する作用を検討している。
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