研究概要 |
テトラヒドロビオプテリン(BH4)は一酸化窒素やモノアミン性神経伝達物質の生合成を制御する因子で,生体内のBH4濃度は神経機能,血管機能に重大な作用を及ぼす。筆者らはGTPからのde novo BH4生合成の律速酵素であるGTPシクロヒドロラーゼ1(GCH)に内在性アンチセンスRNA(GCH naRNA)が存在することを見いだしたので,その発現機構と生理的機能を明らかにしようとしたものである。 1) ラットGCH mRNAレベルを検定するためサイバーグリーンを用いたリアルタイムPCR法を確立した。また,PC12細胞において,セピアプテリン(SP:サルベージ経路によるBH4合成の前駆体)の存在下で4,5日間の培養を行うことにより細胞のGCH活性を低下させる系を作成した。これを用いてGCHmRNAの動態を検討した。同時にGCH naRNAレベルの変化を追跡している。GCH mRNAをNGF等により誘導した際にはGCH naRNAも同時に誘導されたが,GCH mRNAを低下させた場合もGCH naRNAレベルはパラレルに低下した。これらの結果から,GCH naRNAは抑制的というよりはむしろGCH mRNAを保護/安定化の作用をもつと考えられる。 2) GCH mRNAは非常に大きな非翻訳領域(3'UTR : CDSの長さの2.5倍以上)を含むという特徴を持つmRNAで,これはmicroRNAによって発現調節をうけるmRNAに多く見られる性質である。このためGCH mRNAの3'UTR配列を標的とできるmicroRNAをデータバンクから検索し3種の候補を得た。 3) これらのmicroRNAのリアルタイムPCRにる定量法を作成中であり,GCH mRNAに作用するmicroRNAを同定しようとしている。これらのmicroRNAがGCH mRNAレベルが低下する条件でどのように挙動をあらわすか,またGCH naRNAとどのような相互作用を示すかという新たな課題がでてきた。
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