本年度は研究の中間年であるので、昨年度のin vitroにおける成果(破骨細胞のアポトーシスにおけるカスパーゼ3の重要な役割)を基礎として主にin vivo実験を行った。 in vitro実験では、骨吸収抑制薬であるNSAIDやビスフォスホネート製剤が破骨細胞のアポトーシスに及ぼす影響も合わせて検討をはじめた。 連携研究者の高橋により作製したカスパーゼ3遺伝子欠損マウスを用いた。4-10週齢のマウス頭蓋骨について肉眼観察及びX線撮影を行った。遺伝子欠損型マウスの頭蓋冠は生まれた直後には、野生型と比較して異常は認められなかったが、成長に伴いドーム状を呈し、眼耳平面と後頭蓋底前後径との交線は野生型に比べて鈍角となり、頭蓋の成長抑制が認められた。さらに、遺伝子欠損型では頭蓋骨の膜性骨化の石灰化亢進と下顎前突症の所見が著明になる傾向が認められた。つまり10週になると臼歯ばかりではなく、切歯も前突を呈する頭蓋形成異常を示すようになった。 脛骨の組織標本を作製するとカスパーゼ3遺伝子欠損マウスでは、長管骨では逆に加齢により破骨細胞数の上昇と骨量減少を認めた。 以上のことから、カスパーゼ3遺伝子は、骨芽細胞と破骨細胞のアポトーシス制御という面から、骨形成と骨吸収の微妙なバランスを保ち、正常な頭蓋及び長管骨の成長発育などを調整していることが示された。また下顎前突症の発症機序にカスパーゼ3遺伝子欠損によるアポトーシス異常が関与する可能性が示唆された。
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