研究課題
本年度は、研究の最終年度なので、これまで3年間の研究総括を行った。当初2年間のin vitro, in vivo研究により、破骨細胞が骨吸収をした後に、生じる正常なアポトーシスは、破骨細胞自身が分泌する酸や酵素により骨基質に多く含まれるRGDシークエンスが断片化されて取り込まれ、取り込まれたRGDがカスパーゼ3が活性化することで制御されていると示唆された。またこの骨吸収は引き続き骨形成を誘導することもin vivo研究により示せた。このようなカップリング現象という骨吸収と骨形成の微妙なバランスを保たせることで、生体では正常な骨成長もあわせて行われていた。ところが、カスパーゼ3遺伝子欠損マウスではこのバランスが崩れて、破骨細胞の生存延長と骨吸収亢進、併せて骨形成の促進(特に軟骨性骨化)が生じることで下顎骨の過成長を示し、下顎前突症発症の要因となっていた。一方、ビスフォスホネート製剤投与による異常なアポトーシスでは、造血幹細胞から破骨細胞へ分化した直後に死滅してしまうことがわかった。つまり、骨吸収型成熟破骨細胞になる前に死滅してしまうことにより、骨形成因子や走化性因子が欠乏し、吸収窩に骨形成が添加されなくなってしまう可能性が強く示唆された。破骨細胞に直接作用し、骨吸収を抑制させるNSAIDでは高濃度でも、アポトーシスはBPに比べ5分の一程度になっており、破骨細胞が生存することが正常な骨形成に必要なことを示した。BPによる破骨細胞のアポトーシスは、正常な骨形成を著しく抑制することによってBP関連顎骨壊死を引き起こす要因となる可能性を示した。結論として最近、成熟破骨破骨細胞がBMPやWntといった骨形成因子を産生しているという報告にあった通り、成熟破骨細胞の生存延長は過剰な骨形成の亢進を引き起こし、逆に細胞死は骨形成抑制・骨壊死を誘導してしまう可能性が示唆された。
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