研究概要 |
我々はシナプス小胞内ドパミン(DA)枯渇薬のreserpineとDA合成律速酵素阻害薬のα-methyl-p-tyrosine(α-MPT)を用いた研究から,覚醒アミンのdexamphetamineは,線条体のDA神経終末のシナプス小胞のみならず細胞質からもDAを細胞外へ放出することを報告している。D_1受容体作動薬のSKF38393はラットの線条体背側部へ局所投与すると,dexamphetamineと類似した神経活動非依存性の機構により同部位のDAの放出を促進するが,このDAはシナプス小胞と細胞質のいずれを由来とするかは明らかでない。そこで,無麻酔非拘束ラットの線条体背側部へのSKF38393の局所投与が誘発したDA放出におけるシナプス小胞と細胞質のDAプールの役割について,reserpineとα-MPTを用いてin vivo脳微小透析法により検討した。その結果, 1.Reserpine(5mg/kg,24時間前)またはα-MPT(250mg/kg,2時間前)の全身投与の結果,線条体背側部へのSKF38393の局所注入(1.5μg/0.5μl)が誘発した同部位のDA放出は,reserpineにより約82%が,α-MPTにより約62%がそれぞれ抑制され,これらresefpineとα-MPTの抑制効果の合計は100%を超える約144%に達した。 2.細胞内DAを枯渇させるためreserpineとα-MPTを併用投与しても,SKF38393誘発DA放出は約86%までしか抑制できなかった。 以上の結果から,ラットの線条体背側部へのSKF38393の局所投与は,同部位のシナプス小胞と細胞質の両方からDAを放出することが示された。また,このSKF38393処置は細胞内のDAのシナプス小胞と細胞質の間の移動を誘発すること,さらに細胞外DAの細胞内への取込み機構を阻害することがそれぞれ示唆された。
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