研究概要 |
ラット耳下腺腺房細胞からの開口放出はβ刺激により惹起される。[○!R]刺激から開口放出に至る過程において,kinase Aの活性化とそれによるタンパク質のリン酸化反応を伴う。本研究の目的は耳下腺腺房細胞内のkinase Aによりリン酸化されるタンパク質の同定である。細胞をisoproterenolと10分間処理した後2次元電気泳動に付した。銀染色の後,候補タンパク質のプロテオーム解析を行った。放射性アイソトープを用いた実験から分子量が20kD付近であることが示唆されていることから,その前後の分子量のスポットに絞って解析を行った。その結果,FGF-13, Clb, ribosomal protein L10および2種のhypothetical proteinと同定された。1)FGF-13は免疫組織化学により腺房細胞の尖端膜上に存在することが明らかとなったが,kinase Aのリン酸化サイトを有せず,また,分泌には関与しないと判断した。2)hypothetical proteinの内の一つは,アミノ酸182残基からなるタンパク質でありkinase Aのリン酸化サイトを2か所,CDK5のリン酸化サイトを一か所有することから,腺房細胞におけるkinase Aの基質タンパク質として有望であると考えられた。,腺房細胞から得られたmRNAに対してRT-PCRを行ったが,これまでのところ確認に至っていない。3)他方,CDK5/p35系が唾液分泌にかかわる可能性を検討したところ,CDK5の抑制薬存在下amylaseの分泌を抑制したことから当該タンパク質の関与が示唆されたが,p35はその存在が神経系に限るとされていること,また,western blottingやRT-PCRによりp35が耳下腺に確認されないことから,p35以外の因子がCDK5を活性化する可能性が示唆された。今後,この点についても検討を加えたい。
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