研究概要 |
昨年度,ラット耳下腺腺房細胞をβ-アゴニストで刺激してリン酸化されたタンパク質のプロテオーム解析を行った。その結果,候補として推定されたhypothetical protein(Shimo-7)は,Akinaseによるリン酸化サイト2カ所を有することから,遺伝子発現および合成ペプチドに対する抗体を作成しその分泌に対する役割を検討した。腺房細胞から得られたmRNAに対するRT-PCRあるいはラット遺伝子DNAに対するPcRによりshimo-7のクローニングを試みたが現在までの所その目的を果たしていない。他方,Shimo-7のAkinaseリン酸化サイトを含むペプチドおよびそのリン酸化ペプチドを合成し,膜透過性腺房細胞を用いてそれらペプチドの分泌への効果を検討した結果,A kinaseの基質タンパク質して知られているkemptideと同様の効果を示し,分泌に対する決定的な情報を得ることは出来なかった。さらに,腺房細胞の分画後の抗Shimo-7抗体を用いたwestern blottingの結果は,膜画分に複数の強いバンドを与え,抗体の特異性に疑問があった。抗体が認識したバンドをプロテオーム解析した結果,Shimo-7とは一致せずShimo-7の同定に疑問が生じている。膜タンパク質の電気泳動による分離は困難なことからプロテオーム解析に用いた試料の純度に疑問もある。今年度SDSを含むサンプルの等電点電気泳動を可能にする装置を整備した。現在,再度リン酸化反応を行い,基質タンパク質を検索中である。我々は唾液腺における分泌機構の解明は,cAMPを細胞内情報伝達物質とする分泌機構解明に多大な示唆を与えるものと考え,引き続き本プロジェクトを進める。
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