研究概要 |
【目的】骨吸収は破骨細胞の骨への接着側である波状縁に発現する液胞型H^+-ATPase(V-ATPase)とCIC7型C1-チャネル(Clcn7)の分泌輸送体による塩酸(HCl)が分泌され骨ミネラルの溶解がおこる。本研究はこれら輸送体機能分子の欠損及び突然変異マウスを用いてHC1分泌の調節メカニズムと輸送体同士のクロストーク調節機構を明らかにすることを目的としている。本年度はこれらマウスの入手交渉、外国から輸送、SPF化、飼育及び戻し交配などに費用と時間を費やした。現状では0km7を調節するβ・subunitと報告されているOstml(Osteoclast traismembrane protein1)の突然変異を発症するgl/glマウスのみが交配により解析可能になった。その他のV-ATPase突然変異マウス(oc/ocマウス)とClcn7欠損マウスに関しては交配及び戻し交配によりホモマウスを作成中である。そこで、g1/glマウスの骨吸収能、細胞骨格形態及びcr分泌能に関して本年度は解析を行った。 【方法】gl/glマウスの骨髄及び脾臓細胞より破骨細胞を分化・誘導し、骨吸収時におけるHC1分泌能に関して、whole cell patch clamp法、形態染色法、骨吸収能解析及びRT-PCR法にてCl-輸送体発現を野生型、ヘテロ型の破骨細胞と比較検討した。【結果と考察】gl/glマウス由来の破骨細胞における骨吸収能は野生型及びヘテロ型と比較して時間経過が緩やかであったものの同様な骨吸収能を有していた。さらに破骨細胞の骨吸収時の指標であるactin ringを有する細胞形態やその数も野生型及びヘテロ型と比較して優位な変化は認められなかった。次にClcn7の特徴である酸誘発性Cl-電流を検討したところ、細胞外を酸性化(pH 6.5以下)にするとどの遺伝子型由来の破骨細胞においてもCl-電流が活性化され、これらの電流量に大きな違いが認められなかった。さらに,他のCIC型Cl-チャネルによるcr分泌補正作用を検討するために低浸透圧溶液投与による伸展活性化Cl-電流量を比較しても有意な増加は認められなかった。又、RT-PCR法による破骨細胞のCl-輸送体(Clc7,K^+/CI-共輸送体1,Na^+/K+/2CI-共輸送体1)mRNAの発現量を比較してもどの遺伝子型由来の破骨細胞に違いは認められなかった。従って、gl/glマウスを用いた解析からはOstm1により破骨細胞のCl-分泌が調節される可能性は少ないと思われた。
|