研究概要 |
本研究では様々な組織由来のヒト培養細胞株にホタルルシフェラーゼ(FLuc)を導入したパネルを作成し, FLuc siRNAを用いてsiRNAの導入方法の最適化,導入方法の定量評価システムを確立する。このシステムの大きなメリットはsiRNA導入効率の異なる細胞系においてsiRNAの特異および非特異的生物活性比較する事が可能となることである。 昨年度に引き続きFLuc安定発現細胞株を分離し,合計12細胞株の利用が可能となった:骨肉腫細胞株, 1株:乳癌細胞株, 1株:消化管腺癌細胞株, 5株:子宮頸癌細胞株, 3株:卵巣癌細胞株, 1株:および不死化表皮細胞株, 1株。これらについてFLuc siRNAによるRNAiを調べた結果,多くの細胞で40 pM以下でも強力なluciferase抑制効果を示した。これはFLuc siRNAガイド鎖のRISCへの高い取り込み効率,このRlSCの有する高い酵素活性, FLucmRNAへの高いアクセス性などを反映しているものと考えられた。これらの細胞でlamine A/Cや癌遺伝子などの内因性遺伝子に対するsiRNAの効果を検討したが,発現を1/3以下に抑制するために必要なsiRNA濃度は細胞株毎,遺伝子毎で異り,多くの場合FLucに比べて100〜2000倍高い濃度のsiRNAを必要とした。これはmRNAの2次構造や結合因子などの違いからsiRNAに対する感受性に差があるのかもしれない。また細胞株間でFLuc siRNAによるRNAi活性に10〜50倍の違いが見られたが, siRNAの取り込み/RISC形性能の違いによる可能性が示唆された。現在,細胞内siRNAとRISC上のガイド鎖のコピー数の定量をreal time PCRを用いて行うところである。本システムを用いてすでにHPV16関連子宮頸癌に有効なsiRNAを報告したが,現在さらに2つの癌遺伝子を標的としたRNAi創薬の研究を進めている。
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