研究概要 |
本研究ではTomosynthesisといわれる原理を応用したtuned aperture computed tomography (TACT)を用いて口腔外撮影法(口外法)でのう蝕の画像診断を検討するとこを当初の目的としていた。しかし、研究開始後VT法というTACT法に近似の新たな断層画像作製・診断法が提唱された。そこで抜去小臼歯を試料として隣接面齲蝕の診断能についてVT法とTACT法との比較をまずおこなった。反対側の歯列がない理想的な状態ではTACT法とVT法ではほとんど差がなかった。一方反対側がある実際の臨床に近い状態では、VT法がTACT法より良好な診断能を示した。さらに、VT法は撮影が半自動化されており、完全にマニュアルであるTACT法より臨床応用の可能性が高い。よってVT法を用いた場合の検討を更に進めることとした。検討項目としては、撮影時の投影枚数の診断能におよぼす影響、画像処理のおよぼす影響、被曝線量を主な点とした。診断能についてはROC曲線下面積(Az)を指標とした。結果をまとめると、VT法単独、とVT法に専用の画像処理を追加した場合(VT+Sharp)で、明らかな有意差は出なかったもののVT+Sharpが良好な結果となった。VT+Sharpで投影数を5,7,9,11枚と増やしていくとAzの値は0.77、0.60、0.69、0.66と変化した。いずれも明らかな有意差は認めなかったが、投影数が多い9か11が良好な結果を示した。一方通常の口内法撮影によるフィルム読影のAz値は0.66であった。被曝線量は撮影部位により変動するが、11枚投影でパノラマX線撮影の1〜2枚の線量であった。以上より、VT+Sharp法を応用すると、診断能を落とすことなくかつ被曝線量もそれほど大きくない状態で、隣接面齲蝕の診断が口外法でできることが示された。
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