前年度までの多数の口腔上皮癌由来悪性腫瘍株を用いた研究結果から、今年度の研究実施計画では悪性腫瘍株としてKB細胞株とHSC-2細胞株の二種類を選択して研究を進める予定であった。しかしながら、今年度当初のヌードマウスを用いたin vivoの実験において、HSC-2細胞は各種非観血的治療法に対する感受性が高すぎるため、治療効果の違いを評価するための本研究には余り適さないことが判明した。そこで、それ以降の研究ではHSC-2細胞株の使用を中止しKB細胞株に統一して研究を行った。 In vitroの研究では、6MVエックス線照射による放射線療法、43℃加温による温熱療法、微小管阻害剤(ドセタキセル)による化学療法について、コロニーアッセイ法を用いた評価により各治療法における処方量と殺細胞効果関係を明らかにした。さらに、放射線療法と温熱療法あるいは化学療法の併用療法における増感効果を評価し、放射線療法と温熱療法の併用では軽度の増感効果が得られること、放射線療法と化学療法の併用ではより強い増感効果が得られることを定量的に明らかとした。 一方、悪性腫瘍モデルマウスを用いたin vivoの研究において、KB腫瘍では臨床の放射線療法で根治線量として照射される70Gyのエックス線照射では、治療効果が全く不十分であることが判明し、治療期間中にも腫瘍の増大するケースが認められた。それに対し、70Gyのエックス線照射期間中に、週1回の43℃約30分の加温を併用した場合や、週1回のドセタキセル投与を併用した場合、十分な治療効果を得られることが明らかとなった。特に、ドセタキセル併用群では腫瘍の著明な縮小が認められ、in vitroとin vivoの実験結果は一致した。
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