研究課題/領域番号 |
19592198
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
上田 未央 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (90423136)
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研究分担者 |
野杁 由一郎 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 助教 (50218286)
恵比須 繁之 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (50116000)
吉武 史郎 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (10452450)
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キーワード | マクロライド / アジスロマイシン / バイオフィルム / Porphyromonas gingivalis / 難治性根尖性歯周炎 / クオラムセンシング / オートインデューサー / Sub-MIC |
研究概要 |
Porphyromonas gingivalisはヒトの難治性根尖性歯周炎や成人性歯周炎に密接に関与している。一方、バイオフィルムは抗生物質に抵抗性を示すが、15員環のマクロライド製剤であるアジスロマイシンは、緑膿菌に対しては最小発育阻止濃度(MIC)以下のsub-MIC濃度でクオラムセンシングを担うオートインデューサーの産生を抑制し、バイオフィルム形成を阻害する。本年度は、sub-MIC濃度のアジスロマイシンがP. gingivalisバイオフィルムに及ぼす影響の検索を目的として以下の実験を行った。 P. gingivalis381株、W83株、HW24D1株(各MICs:0.5μg/ml)、陰性対照としてRE1株(381株のglycosyltransferaseをコードする遺伝子の欠損株で、アジスロマイシン耐性株)を供試菌株として、まず連続希釈法にて、各々の菌株の浮遊細胞に対するMICを検索した。次に、独自に開発したModified Robbins deviceを用いて、ヒドロキシアパタイトディスク(n=10)上にバイオフィルムを形成させた後、アジスロマイシンの最終濃度が1μg/mlおよびsub-MIC濃度、すなわち0.125μg/mlになるように調整した培養液を3日間添加した。さらに4日間培養液のみを灌流し、バイオフィルムの生物学的活性をATP analyzerで評価するとともに、微細形態学的に検索した。 381株、W83株、ならびにHW24D1株のMICはそれぞれ2.5.1.25.>20μg/mlであった。一方、バイオフィルムについては、3株ともsub-MIC濃度である0.125μg/mlのアジスロマイシンの添加によりATP量が有意に低下した(p<0.005)。RE1株ではATP量が増加傾向を示したが、有意差はみられなかった。微細形態学的では、いずれの菌株のバイオフィルムも抑制傾向がみられ、形成領域が縮小した。これらより、低濃度のアジスロマイシンは、P. gingivalisのバイオフィルムに対しては、その成長過程で作用するのではなく、成熟したバイオフィルムの、1)菌体表層のマトリックスに影響を及ぼす、2)致死感受性を亢進させる、などにより抗バイオフィルム作用を発揮した可能性が示唆された。
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