研究概要 |
本研究は,申請者らが考案した歯髄方向への3次元的な辺縁漏洩の進行程度の評価に適した電気的辺縁漏洩診断法と,辺縁漏洩幅の推定や発生部位のマッピングに適した色彩評価法を組み合せて,電気的辺縁漏洩診断法をさらに客観的かつ定量的な総合診断法として発展させようとするものである.平成19年度は,ギャップ幅の規定が可能で,電気的評価や色彩評価に使用可能な辺縁漏洩モデル実験系をヒト抜去歯にて確立し,それを用いて辺縁漏洩の色彩評価法および電気的辺縁漏洩診断法について,適切な測定条件の検索を試みた.具体的には,ヒト抜去大臼歯の咬合面の一部を窩洞に見立てて削除し,削除歯質表層に分離剤(CRセップIII,クラレ)を一層塗布した.そして,象牙質接着処理とコンポジットレジン修復を行ったのち,一旦,コンポジットレジン硬化体を撤去して,スペーサーを削除歯質の両端に塗布した.その後,歯質とコンポジットレジン硬化体を再度ネジ固定し,辺縁漏洩モデル実験系とした.この際,スペーサー塗布回数を変化させることで歯質とコンポジットレジン硬化体とのギャップ幅を変化させた.この辺縁漏洩モデル実験系を用いて,1)スペーサー塗布前およびスペーサー塗布後の辺縁漏洩モデルのギャップ幅を実測した結果.数μmから100μm程度のギャップ幅を再現できた.2)様々な塗布方法で色素溶液(アシッドレッド,メチレンブルー)による辺縁漏洩部の検出を行った結果,ギャップ幅が30μm未満では塗布後清拭する方法が判別しやすいが,それ以上では,塗布後に水洗乾燥した方が周囲とのコントラストが大きくなることがわかった.3)電気的な評価では,電圧を上げると周波数を下げてもノイズは発生しにくいことが判明した.現在,引き続き,辺縁漏洩評価に最適な電圧と周波数の検索を続けている.
|