研究概要 |
本研究は,申請者らが考案した電気的辺縁漏洩診断法に色彩評価法を組み合せて,客観的な辺縁漏洩総合診断法を確立しようとするものである.研究期間の最終年度となる本年度は,色彩評価法および電気的辺縁漏洩診断法による診断結果と辺縁漏洩の状態との関係を詳細に検討した.具体的には,前年度に確立したコンポジットレジンによる辺縁漏洩モデル実験系を用いて,高倍率実体顕微鏡による修復物辺縁部ギャップ幅実測値と,CCDカメラによる撮影画像から得た色素溶液(アシッドレッド)塗布後の辺縁部および辺縁周囲のL*a*b*,色素染色幅,余剰色素溶液除去方法との関係を調べた.また,う蝕抜去歯を用いて,視診による色評価とL*a*b*の関係を調べ,CCDカメラによる色評価の客観性を評価した.さらに,健全抜去歯によるコンポジットレジン修復実験系で,ボンディング材を用いずに窩洞深さを変化させることで,様々な深さの辺縁漏洩モデルを作製し,電気的辺縁漏洩診断法による診断結果との関係を調べた.その結果,1)辺縁部と辺縁周囲との色差は,ギャップ幅が10μm以上では,エアーブロー処理および清拭処理よりも水洗乾燥処理の方が有意に大きくなり,視認性が向上したが,ギャップ幅実測値と色素染色幅の相関係数は,エアーブロー処理が最大であったため,ギャップ幅の評価にはエアーブロー処理が適当であった.2)CCDカメラによる色彩評価は視診と比較して客観性が高かった.3)ギャップ形成が歯髄方向に進行するほどコンダクタンス値は大きくなったことから,歯髄方向へのギャップの進展は,電気的辺縁漏洩診断法により評価が可能であった.以上のことから,電気的辺縁漏洩診断法とギャップの形成部位や幅の評価に適した色彩評価法を組合わすことで,辺縁漏洩の進行を定量的客観的に3次元評価できる可能性が示された.
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