研究概要 |
昨年度は,レーザー処理象牙質におけるレジンの接着性を低下させない照射条件の策定を図ったところ,中出力照射が象牙質表層のコラーゲン線維への侵襲度が小さく,レジンの接着性も低下させないことが明らかとなった。本年度は,痛みもなくレジンの接着性も低下させないレーザー照射法を開発するとともに、当該処理面に最適なレーザー専用ボンディング材の開発を目指して以下の通り実施した。 新鮮抜去ヒト第3大臼歯から#600仕上げの象牙質試片を調製後,Er:YAGレーザー(アドベール/モリタ)を用いて,一般に痛みをほとんど感じない低出力(50mJ/10pps)で照射した後,中出力(150mJ/10pps)で「フィニッシング照射」を施し,照射された象牙質表層の超微細構造を透過電子顕微鏡(未脱灰未染色)により観察した。また,新鮮抜去牛前歯に形成したクサビ状欠損窩洞表面を前記の方法により照射し,Clearfil Mega Bond/AP-Xで充填した。37℃水中24時間保管後,微小引張り試験法により接着性を検討した。 フィニッシング照射された象牙質においては,部分的にコラーゲン線維が断裂した様な像が散見されたのみで正常象牙質との識別が困難であり,低出力照射群で観察された無定形の層は認められなかった。一方,接着試験では,低出力照射によりは低下したレジンの接着性が,フィニッシング照射を施すと有意に上昇したが,無処理の面より低かった(p<0.05)。照射エネルギーが小さいため蒸散しきれずに残存した変性層が,中出力のフィニッシング照射により蒸散した結果,レジンの接着性が回復したものと考えられた。一方,フィニッシング照射された象牙質面におけるレジン添加型GICの接着性は,無処理の面と変わらず,ポリアシッド系のモノマーの有効性が確認された。今後は,モノマーの構造や配合などの条件を検討する予定である。
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