研究概要 |
歯質保存的修復法(MI修復法)の普及のために、特定の専門や経験年数の歯科医師にターゲットを絞った効率的なアプローチが可能か否かを明らかにすることを目的として、19年度に行ったアンケート調査のデータに対してBarnard分析および重回帰分析を行った。その結果、MI修復法を認識せず、実際にMI修復法を選択しなかった歯科医師は、「保存・補綴系以外」に偏在していた。19年度の結果と併せて考えると、生活歯の場合、これらの歯科医師にはMIを認知させることによりMI修復法を普及させることが可能と思われる。しかし失活歯の場合は、「MIの認知」と「MI修復法の選択」との間に正の相関がなかったことから、他の方策を検討する必要がある。MIを認知している歯科医師の場合(重回帰分析)、生活歯では、MI修復法のアウトカムを懸念して従来型修復法を選択した回答者は、「補綴系」および「保存系」の卒後年数2~4年、および「保存・補綴系以外」に所属する卒後年数5年以上の歯科医師に偏在していた。しかし、重回帰モデルの決定係数は0.128と小さく,アウトカムを懸念してMI修復法を選択しないという現象の約9割(1.00-0.128=0.872)は、専門や経験年数とは関係のないところで決まっていることも示唆する結果であった。一方失活歯の場合は、アウトカムを懸念してMI修復法を選択しない歯科医師は,特定の専門,経験年数に偏在していないことが明らかとなった。以上のことより、MI修復法の普及のためには、生活歯の場合は上記歯科医師にターゲットを絞ったアプローチがある程度有効であると思われる。しかし同時に、特に失活歯において、接着システムを応用したMI修復法の長期予後に関する信頼性を裏付けるエビデンスの蓄積・発信とともに、MI修復法を選択するインセンティブとなるような診療報酬の改定を含む方策が必要であると考えられた。
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