研究概要 |
本研究では,ワンボトル・ワンステップボンディング材であるクリアフィルトライエスボンドおよびG-ボンドと歯質との相互作用の詳細を核磁気共鳴法(^13C NMR法)を用いて検討した.機能性モノマーが主成分であるクリアフィルトライエスボンドおよびG-ボンドを40℃恒温漕中に保管し,経時的に^13C NMRスペクトルを測定し,ワンボトル・ワンステップボンディング材中に含まれる酸性,親水性および多官能性モノマーの加水分解安定性を調べとともに,ボンディング材の劣化が歯質に対するレジンの接着強さに及ぼす影響を検討した. ワンボトル・ワンステップボンディング材中に含まれる酸性あるいは親水性メタクリル酸エステルモノマーの加水分解安定性を^<13>C NMRスペクトルの変化から解析した. その結果,クリアフィルトライエスボンドおよびG-ボンドを40℃恒温槽に保管すると,HEMAのエステル基が加水分解し,その分解産物としてメタクリル酸,エチレングリコールが生成されることがわかった.この結果から,ワンボトル・ワンステップボンディング材の保管期間が長くなるにつれて配合されているHEMAのエステル基が加水分解し,トライエスボンドは14週間40℃で保管するとHEMAは19.1%分解され,メタクリル酸とエチレングリコールが生成された.これはMDPの脱灰によって露出した象牙質コラーゲンのHEMAによるプライミング効果が低下するとともに,重合に預からないエチレングリコールがボンディング材層内に存在するためで,象牙質に対するレジンの接着強さにおいて保管期間が長くなると低下したものと考えられる. また,ボンディング材がエタノールで希釈されているため,MDPのリン酸基の電離が抑制されたためでもある. 以上の結果から,MDPのリン酸基の電離の程度が歯質アパタイトの脱灰能,および加水分解安定性に影響を及ぼすことがわかった.
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