研究概要 |
研究実施計画に基づき,平成20年度までに新規疎水性シランカップリング剤を種々合成,開発し,その処理効果がガラス面に対する接着強さから耐水性も有すること,またこの疎水性シランカップリング剤で処理したシリカフィラーを用いて試作コンポジットレジンも水中保管後の機械的強さは耐水性を有し,カップリング効果が有効であると示唆された.本年度は,合成したシランカップリング剤の処理効果と耐水耐久性の要因について検討した.その結果, 1.合成した新規シランカップリング剤(p-MBS)で処理したフィラーは,水中あるいは熱水保管後においても,TGA-massの測定により,フィラーから脱離した分子が少なく,シラン処理層に耐水耐熱性を有することが認められた. 2.合成した新規シランカップリング剤は重合性基と疎水性基の相反する性質を1分子内に有することより,処理層のミクロ的解析として,ミクロドメイン構造が形成されている可能性があるが,TEMによりドメイン構造が観察されなかったので,分子構造上耐水性を有するシランカップリング剤として有効と示唆された. 以上の結果より,ベンゼン環を挟み加水分解性基と有機官能基が対称性に位置するシランカップリング剤で処理されたフィラーを含むコンポジットレジンは,カップリング層の耐加水分解が向上し,しかもレジンマトリックスとの相溶性が増し,フィラーとベースレジンの親和性が高められたことが示唆され,歯科高分子材料,セラミック材料,あるいは工業界においても有効なシランカップリング剤であると考えられた.
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