本研究の目的は、細胞特異的親和性を有するバイオマテリアルを開発することである。デンタルインプラントは上皮を貫通して顎骨内に固定されるのがその特徴で、部位によって接している生体組織が異なるためマテリアルの最適なバイオロジー的特性が部位によって異なる。本研究課題の最終年度にあたる本年度は、前年度の実験結果をもとに新規サーフェイスのさらなる改良とバイオマテリアル上での細胞運動、細胞接着ならびにマテリアルの安全性を調べることを到達目標とした。 1.バイオマテリアルサンプルの準備 初年度に用いたチタンディスクに加えて、現在、実際にアバットメント用として臨床応用されているジルコニアをインプラントメーカーより入手した。このジルコニアディスクを用いて、無処理のものと光照射処理したものを準備した。 2.バイオマテリアル上での細胞運動・細胞接着ならびにマテリアルの安全性の検討 8週齢の雄ラットから採取し分離培養した骨芽細胞の細胞運動および細胞接着に関与するlntegrin、 Racl、 RhoA、 Cdc42に着目し、発現パターンを網羅的に解析した。また、 in vitroでのFlow cytometryによるCell viability testを行い、光照射処理したバイオマテリアルの安全性についても確認した。しかしながら、当初予定していた上皮細胞を用いた実験系では必ずしも期待通りの実験結果とはならなかったため、今後さらなる検討を継続する予定である。
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