研究概要 |
本研究では、ラットの臼歯を抜歯した後実験義歯を装着し、歯槽骨および床下顎堤の骨リモデリングの様相をSPECTによる骨シンチグラフィーを用いて経時的に観察することを目的としている。平成19年度の計画は,Wister系雄性ラットを使用し,右側臼歯3本を麻酔下で抜歯。その後,抜歯したラットに験義歯を装着し骨シンチグラフィーを用いて抜歯窩,義歯床下骨組織および顎関節部における骨代謝動態を経時的に観察することにあった.抜歯窩および義歯床下骨組織においては抜歯後2週まで,また,顎関節部においては,抜歯後3週目まで健側に対して有意なTc-99m-MDPの集積値の上昇が見られた.さらにこれらの反応が,炎症性反応であるかどうかを見るために骨シンチグラフィーの初期相・後期相での実験および組織学的な検討を行ったところ,炎症性のものではないという結論が得られた.義歯装着後の生体組織反応の変化については未だに未解明な部分が多い。臨床的にはどの時点でどのような反応が生体内で生じるかということはきわめて大きな関心事項である。さらにそれが為害作用のある炎症によるものか、あるいは生体の持つ生理的な改変なのかを評価するのは困難である。本実験では骨シンチグラフィーによる骨代謝回転の状態を経時的に観察することに成功した。またこれが炎症と区別できるものであることも実証された。これらの変化は,骨に加わるメカニカルストレスの変化に適応するための生体反応として骨代謝活性に変化が生じ骨のリモデリングがしょうじたものと考えられる.これらの知見は歯科補綴学的に新たな診断の基礎をなす有用な結果であると考えられる。
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