本研究では部分床義歯装着者の咀嚼能力と口腔関連QOL(Quality of Life)との関連を明らかにすることを目的としている。初年度では予備的研究として、健常有歯顎者において混合能力と粉砕能力の関連を検討し、次いで混合能力試験と粉砕能力試験の試験試料を咀嚼時の下顎運動について比較を行った。その結果、混合能力はピーナッツを試験試料とした粉砕能力と中程度に関連するが、グミゼリーを試験試料とした粉砕能力とは関連が認められなかった。さらに、混合能力試験の試料であるワックスキューブと粉砕能力の試料であるピーナッツを咀嚼中の下顎運動は異なる様相を示すことが明らかになった。これらの結果は、テクスチャーの異なる試料を用いた咀嚼能力試験は、咀嚼の異なる側面を評価していることを示している。これらの研究結果の意義としは、テクスチャーの異なる試験試料を用いることでより幅広く咀嚼能力を評価できることが挙げられる。したがって、本研究において咀嚼能力と口腔関連QOLとの関連を調査する際には、テクスチャーの異なる試験試料を用いた咀嚼能力試験(混合能力試験と粉砕能力試験)を用いることが重要であることが示された。以上の研究成果を踏まえて、部分床義歯装着患者を対象として、ピーナツ、グミゼリー、ワックスキューブを試料とした咀嚼能力試験を行い、また口腔関連QOLについてはOral Health Impact Profileを用いてデータの収集と解析を行っている。なお、研究成果の一部は、専門学会および専門学術誌に発表した。
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