歯科インプラントは現代の欠損補綴に欠くことのできない治療方法となりつつある。従来、インプラント治療の成功には、オッセオインテグレーションの獲得が絶対要件と考えられてきたが、この定義はどちらかと言えば臨床的なものであり、科学的な明確さを欠くことが指摘されてきた。本研究はインプラントの臨床を支えるオッセオインテグレーションを再度検討すると共に、これまでとは全く異なる視点からインプラント周囲の生体組織反応を検索するものである。すでに、オッセオインテグレーションを獲得した後にもインプラントの周囲に骨窩洞形成時に侵襲を受けたことに起因して生じる空虚な骨小腔を含む既存骨が存在することが明らかにされている。初年度に当たる平成19年度は、このような既存骨が正常な骨組織に代謝されるまでに要する期間について調査し、同時に傷害を受けた既存骨の代謝動態についても観察を行った。その結果、インプラント周囲が正常な骨組織に置き換わるまでにはオッセオインテグレーションの獲得に必要な治癒期間よりもはるかに長い期間が必要になることが判明した(実験動物=ラット、オッセオインテグレーション獲得までに1ケ月、傷害された既存骨が正常な骨組織に代謝されるまでに3ケ月の期間が必要)。この結果を受けて平成20年度では傷害された骨の代謝動態をさらに詳細に観察し、研究の総括として歯科インプラントの成功基準について科学的見地から考察を加える予定である。
|