研究課題
本研究は未だ臨床先行の傾向が強い歯科インプラントについて、生体内(顎骨)に埋め込まれたインプラントが生物学的に安定する時期を検索する目的で行ったものである。平成19年度において、インプラントが臨床的に安定したと思われる時期(本実験モデルでは1カ月後)には埋入手術によって生じた障害を受けた領域がインプラント周囲の顎骨に残存しており、これらが代謝・置換されるまでにはさらに治癒期間(3ヵ月)を要することを明らかにした。これを受けて平成20年度には障害を受けた領域の代謝動態を骨形成系・吸収系のマーカを用いた酵素組織化学的(アルカリフォスファターゼ、酒石酸耐性アシッドフォスファターゼ活性)、骨基質タンパクに関する免疫組織化学的(オステオポンチン、ボーンシアロプロテイン、I型コラーゲン)手法を用いて検索した。その結果、いずれのマーカにおいてもインプラント埋入後1〜2カ月の間に強い陽性反応が認められ、3ヶ月後以降は比較的弱い反応がみられることがわかった。また、インプラント周囲骨の吸収・形成に関してよりダイナミックに観察することを目的として行った骨ラベリングでは一定の期間内に形成される新生骨の量はインプラント埋入3ヶ月後以降で安定し、正常な顎骨組織と同等になることが示された。さらに、インプラント周囲骨のEPMA元素分析を行ったところ、骨組織に最も多く含まれるカルシウム、リンの濃度は術後2.5カ月で一様となり、その後上昇することがわかった。以上の結果より、歯科インプラントが生物学的に安定する時期について貴重な考察を加えることができた。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)
The Anatomical Record 292
ページ: 38-47
18th Annual Scientific Meeting of Australia…Bone and Mineral Society, Abstract Book 8
ページ: 28-30
J. Dent. Res. 87 (Spec. Issue)
ページ: 3286
日本補綴学会誌 52(Suppl)
ページ: 124
歯科基礎医学会雑誌 50(抄録集)
ページ: 139
解剖学会雑誌 83 (Suppl)
ページ: 184