研究概要 |
1.健常若年群で食品物性の嚥下機能に対する影響を官能評価と筋電図で検討した。官能評価では増粘剤の濃度は影響をあたえており、濃度が高い3.0%は付着性や凝集性のため評価が低かった。筋電図の測定でも濃度により口腔内での停留に変化があり低濃度のほうが嚥下しやすい結果となり、試験食品の動謡変性の性質は官能評価と同様に口腔咽頭の嚥下の筋電図にも影響していることが示唆された。(Dysphagia in press) 2.嚥下機能と口腔乾燥との関連を調べるため、味や物性、食品形態を変化させたときの嚥下状態の違いを若年者と高齢者で比較検討した。物性がゼラチンに近い即溶性低強度寒天(LGSA:low-gel strength agar)を試料とした。その結果,味を呈する試料の硬さは濃度変化に相応して無味の試料に比べて高いことが示唆された。さらに総合官能評価では健常学生群は1.1%が好ましい硬さであり、味では甘味・量は5gが最も口腔内で嚥下しやすいと評価した。一方健常高齢者群は甘味のみが嚥下しやすいと評価した。このことは食品物性を含むいくつかの要因が嚥下にたいして関与していることが示唆された。【J. of Home Economics of Japan 2009, 60, 133-138】 3.高齢者に多い口腔乾燥(唾液不足)の疾患のひとつである自己免疫疾患のシェーグレン症候群患者の唾液タンパク質を検討したなかでもMatrix Metalloproteinase-9がこの疾患に関与していることがしられており、この酵素の患者唾液中での検出・同定に着手したところ、応用カラムで精製・検出が可能になり、患者群で健常群より酵素量も多いことが示唆され、将来はこの疾患の治療に貢献できるのはと期待している。(Clinica Chimica Acta 2009, 409, 269-271)
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