研究概要 |
II型可溶型TNF受容体を用いた重度変形性顎関節症(TMJ OA)に対する局所抗サイトカイン療法の実現を目的に,本年度は以下の実験を行った.ラット新生児膝関節より採取した軟骨細胞を単離後初代培養し,サブコンフルエントの時点でTNFα(10 ng/ml),IL-1β(10 ng/ml)を単独,同時添加し,その6,18時間後に完全ヒト可溶型TNFα/LTαレセプター製剤(エンブレル[○!R])(300ng/ml)を培養液中に添加,TNFα,IL-1β添加時から12,24時間後の培養軟骨細胞におけるMMP3,9,13遺伝子発現をreal-time RT-PCRで定量し,エンブレル[○!R]の効果を検討した.その結果,IL-1β単独添加により上昇したmmp発現はエンブレル[○!R]により抑制されなかったが,TNFα単独,TNFαとIL-1β同時添加により上昇したmmp発現に対しては抑制傾向がみられた.特にTNFα単独添加24時間後のmmp3発現が,TNFαとIL-1β同時添加12,24時間後のmmp13発現がエンブレル[○!R]により有意に抑制された.現在はin vivoでの検討のため,TMJ OAモデルラットの作製とエンブレル[○!R]の顎関節腔内局所注入を試みている.さらに,TMJ OAに特異的な蛋白質を同定する目的で,健康被験者1名,TMJ OA患者2名の顎関節滑液を対象にサイトカインアレイ解析により174種類のサイトカインの発現を調べた.その結果,健康被験者に比べ患者で2倍以上の発現量であったサイトカインが各々17種,23種検出され,その内IL-1RII,SDF-1βが患者群で共通して多かった.一方,健康被験者に比べ1/2以下の発現量であったサイトカインは各々1種,3種でIGFBP-6が共通して少なかった.今後は解析サンプル数を増加しさらに解析を進め,本疾患特異的タンパク質の同定と新規治療法の開発を目指す.
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