研究概要 |
本研究目的の一環として,変形性顎関節症患者の顎関節滑液中タンパク質の網羅的解析を行い,特異的タンパク質の同定を試みた. 実験1:質量分析計(LC/MS System阻)を用い,健康被験者(Co)群,変形性顎関節症(OA)群,関節リウマチ(RA)群(各N=2)の顎関節滑液中タンパク質の網羅的解析(LC/MS解析)を行った. 結果1:いずれの滑液からもアルブミン,IgG,トランスフェリン等の血清内主要タンパク質が多く検出され,疾患特異的タンパク質となりうるべきタンパク質は検出されなかった. 実験2:そこで,血清内主要タンパク質による微量タンパク質のマスキングを抑制するために,Co群(N=3),OA群 (N=3),非復位性関節円板前方転位(woR)群(N=2),RA群(N=2)に関して血清内主要タンパク質のカラム除去処理を行い,LC/MS解析を行った. 結果2:除去カラム未使用と比べ,各群の検出タンパク質数は増加し,Co群に比べOA群,woR群,RA群で検出タンパク質が多い傾向がみられた.しかし,各疾患に有意な存在が報告されているタンパク質が検出されず,同一群内での検出タンパク質にもばらつきがあった. 実験3:さらに微量タンパク質の検出を高めるために,OA滑液(N=1)に関し,ZipTipによる分画を行った上で,LC/MS解析を行った. 結果3:カラム処理,トリプシン処理,ZipTip処理の順で前処理を行うと,ZipTip未処理と比べ検出タンパク質は増加する傾向がみられたが,処理ステップ増加に伴うタンパク質の喪失もみられた. 以上より,LC/MS解析による本疾患の特異的タンパク質同定には前処理方法のさらなる検討が必要である.しかしその同定が可能となれば,II型可溶型TNF受容体による局所抗サイトカイン療法の効果判定への応用だけでなく,本疾患に体する新規治療法開発も期待できる.
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