研究概要 |
歯科材料から溶出する内分泌撹乱化学物質については、酵母や細菌を使ったエストロゲン受容体(ER)に対する活性を評価するin vitro試験が実施されており,個々の化学物質の安全性が検討されている。一方,エストロゲン活性としてとらえられてきた内分泌撹乱物質の人体への影響は,最近の研究により、脳の発達に影響を与える甲状腺ホルモンの異常がより重大視されるようになってきた。甲状腺ホルモン作用の評価試験法についても、甲状腺ホルモン受容体(TR)や甲状腺ホルモン輸送タンパク(TTR)やTRとヘテロダイマーを形成するレチノイドX受容体(RXR)に対する活性を評価するin vitroの試験系が開発されている。しかしながら,口腔内のように,より高度な安全性が求められる揚合には,in vivo試験での検討が不可欠となる。そこで,本研究は、甲状腺ホルモンおよびエストロゲン作用撹乱化学物質のin vitroおよびin vivoバイオアッセイを両生類(アフリカツメガエル)を使って確立し,口腔内で溶出する内分泌撹乱物質の安全性の評価に応用するものである。よって本年度は、(1)歯科材料に含まれる化学物質のなかで、内分泌攪乱化学物質作用を示す物質の探索を従来用いられている酵母系アッセイで行った。その結果、歯科用レジンに含まれる重合開始剤および紫外線吸収剤にエストロゲン活性および甲状腺ホルモン様作用の存在が明らかにされた。 (2)(1)で検出された化学物質の溶出濃度でカエルの肝細胞による内分泌攪乱化学物質様作用の検出をビテロジェニン量の測定(in vitro)より行った。その結果、酵母系バイオアッセイで検出された内分泌攪乱化学物質様作用は、カエルを使用した本実験系では検出されなかった。 以上の結果より、今後、化学物質の代謝経路の解明および両生類試験法のin vivoでの検証を行う予定である。
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