咬合様式の選択にあたっては、研究者、臨床家の間で意見が分かれているが、概ね顎堤条件によってフルバランスドオクルージョンかリンガライズドオクルージョンのどちらを選択するか決定しているのが現状である。しかし、臨床では、顎堤条件ばかりでなく、生活習慣、食習慣、口腔機能、性別、個性、QOLなどの条件が複雑に存在し、これらを考慮するとどちらの咬合様式を選択するか明確な指標がなく、迷うことが多い。そこで、患者の主観的評価(QOL、義歯満足度)、客観的評価(栄養状態、咬合状態、咀嚼機能)と術前に調査した、年齢、性別、口腔の条件、身体社会的条件、旧義歯の状態との関連について詳細に検討し、咬合様式選択に関するいくつかの指標を設けることとした。 本年度はまず術前診査項目の決定と診査票の作成を行った、術前診査項目は年齢、性別、唾液量と粘度、旧義歯の状態(咬合高径、咬合様式、床面積)に加え(社)日本補綴歯科学会の「補綴治療の難易度を測定するプロトコル(JSPVersion 1.04)」を用いることとした。 次に咬合様式の交換方法を再考した。当初、作業用模型を耐火模型用シリコーン印象材にて印象、複製し、2つの模型からリンガライズド・オクルージョンとフルバランスド・オクルージョンを付与した義歯を作製し行う予定であったが、予備実験を行った結果、研磨面の形態の違いによって義歯の維持安定、患者の満足度等影響が出ることがわかったため、臼歯人工歯部のみを交換することとした。 最後に義歯装着後の評価項目の決定と評価票の作成を行った。評価には、「補綴治療の難易度を測定するプロトコル」に加え、簡易栄養状態評価法(MNA)、咬合状態(デンタルプレスケール)を用いることとした。
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