納豆菌が産生するボリーγーグルタミン酸(以下、γ-PGA)について、義歯安定剤への応用について検討した.9種類の市販義歯安定剤、4種類の口腔化粧品、人工唾液およびγ-PGAについで、実験口蓋床を用いて直接口腔内で吸着力の増強効果および使用感覚について比較した。市販義歯安定剤は、その性状によって吸着力の増強効果および装用感に差が認められた。シートタイプは操作性に優れるが、粘着力に劣り、ペーストタイプは口蓋粘膜への残留は少ないものの、粘着力に劣った。クリームタイプは粘着力に優れるが、粘膜への残留が多く、不快感が強かった。パウダータイプは操作性がよく、粘着力も高く、粘膜への残留は少なかったが、やや不快感があり、特に味が気になった。口腔化粧品および人工唾液には吸着力の増強効果はほとんど認められなかった。γ-PGAの吸着力増強効果はコントロールの4倍であり、最も高い値であった。またγ-PGAは含嗽で容易に除去可能であるため、口蓋粘膜への残留はほとんどなかった。口腔感覚の変化はなく、味による不快感もなかった。次に、5種類の市販義歯安定剤および5種類の濃度のγ-PGAについて、レジン平板を用いて基礎的粘着力について検討した。γ-PGAは、厚さと溶媒の温度の影響について比較した。市販義歯安定剤の平均粘着力は5KPa以上でありポリグリップは約25KPaでも高かつた。γ-PGA(厚さ0.5mm)は、濃度性に粘着力が高くなったが、10%以下の濃度では粘着力は5KPa以下であり、市販義歯安定剤より有意に低い値であった。γ-PGAの裏装厚さが大きくなるに従って、各濃度における粘着力は小さくなった。また溶媒の温度が高くなる従って、各濃度γ-PGAの粘着力は高くなる傾向が認められた。in vitroにおけるγ-PGAの粘着力はin vivoでの結果と異なった。
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