口腔インプラントの骨埋入部をハイドロキシアパタイト(HA)薄膜でコーティングする表面処理法は、骨伝導性の付与に有効である。しかし、多孔質な表面に対しても均一なHA薄膜を簡便に形成できる方法は、未だ開発されていない。表面に形成されたポーラス構造の空隙に骨の侵入を早期に実現できる骨伝導型多孔質インプラントが開発され、骨とインプラントフィクスチャーとの機械的結合が強化されれば、インプラントの初期固定が向上するばかりでなく、短いインプラントの使用が可能となり、臨床上きわめて有用であるものと考えられる。 そこで本研究では、多孔質なインプラントフィクスチャーに対しても、高い骨伝導性を有するHA薄膜を細孔の内部まで均一に形成するコーティング法を確立することを目的としている。また、口腔インプラントは生体内で高い耐食性を有していなければならないことから、コーティング前後における純TiならびにTi合金の耐食性を評価する。具体的には、(1)HA薄膜形成時の基盤加熱温度やHA薄膜の熱処理条件と析出したHAの結晶性や溶解性との関係を調べる、(2)HA薄膜の溶解性とpH緩衝能との関係を明らかにし、骨伝導モデルを理論的に構築するための基礎データを得る、(3)HAコーティング前後における純TiやTi合金の耐食性を評価する、(4)(1)~(3)の基礎データに基づいて、溶解性およびpH緩衝能を調整したHA薄膜を均一にコーティングした多孔質インプラントを創製する。
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