研究概要 |
インプラント治療が顎骨内部構造の形態変化に及ぼす影響を明らかにするため、いくつかの条件下における顎骨骨梁に生じる応力の伝達経路を明らかにすることを目的とし、解析を行った。解析に際しては、有歯顎、無歯顎およびインプラントが埋入された顎骨をマイクロCTを用いて撮影を行い、三次元立体構築した後に骨梁構造の観察とマクロなヤング率・ポアソン比・せん断係数を含めた骨形態計測を行った。同時にマイクロCTデータの2値化処理を行い、海綿骨の骨梁構造を含めたモデルを作製し三次元有限要素解析を行うことで、異なる角度条件下(頬側より15°,45°,90°,135°,165°)での荷重伝達経路の把握を行った。その結果、海綿骨骨梁においてRouxの提唱した骨の最小材料最大強度説を裏付ける構造を呈していることが判明したが、一方で海綿骨骨梁構造が垂直荷重に対して大きな役割を負っているのに対し、水平荷重では皮質骨に対する応力集中が大きいなど荷重条件によりその役割分担も異なることが示唆された。今回の研究により、はじめて顎骨骨梁内部の主応力ベクトル表現から荷重伝達経路を確認することができた。また、骨形態計測結果と照らし合わせることで骨梁構造の異方性定量化をはかることができた。さらに次年度はインプラント治療において起こりうる偶発症を想定したシミュレーションを行うことで、インプラント周囲骨における生体力学的検討を行っていく予定である。
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