研究概要 |
本研究では,新規な3次元スキャホールドであるチタンファイバーメッシュに分子プレカーサー法を用いて炭酸含有アパタイト(CA)薄膜コーティングを施し,その後,骨粗鬆症の治療薬として用いられているビスフォスフォネートの固定化を試みた.ビスフォスフォネートは破骨細胞だけでなく骨芽細胞にも作用して骨吸収を間接的に抑制し,骨形成を促進するという報告がなされている.まず,分子プレカーサー法によるCA薄膜コーティングを試みた.分子プレカーサー溶液はEDTA-Ca錯体のアルコール溶液とメタリン酸ジブチルアンモニウム塩をCa/P=1.67の割合で調整して作製した.本プレカーサー溶液はアルコール溶液であり,チタンファイバーメッシュとしては,気効率85%,直径15mm,厚さ3.0mmの円柱状の物を用いた.超音波処理を施しながら,チタンファイバーメッシュを分子プレカーサー溶液に20分間浸漬し,その後,60℃で20分間,600℃で2時間加熱処理を行なった.この操作を3回繰り返してCA薄膜コーティング処理を行なった.CA薄膜コーティングチタン(CA/Ti)ファイバーおよびコーティング処理を施していないチタン(Ti)ファイバーをビスフォスフォネート水溶液(10-2M)に浸漬し,ビスフォスフォネートの固定化を検討した.その結果,CA/Tiファイバーを浸漬すると,1日浸漬後で,チタンファイバーの周囲にゲル状物質が生成していた.ゲル状物質は浸漬時間の経過と共に成長し,さらに溶液の粘性も高くなる傾向にあった.それに対して,チタンファイバーの場合,ゲル状物質は生成せず,溶液の粘性にも変化は見られなかった.CA薄膜コーティングがビスフォスフォネートのゲル化促進に寄与している物と思われた.
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