研究概要 |
本研究では,分子プレカーサー法を用いて炭酸含有アパタイト(CA)薄膜コーティングを施したチタン(Ti)ファイバーに,骨粗鬆症の治療薬として用いられているビスフォスフォネート(BP)を固定化し,動物埋入実験によって,固定化BPの骨適合性について検討した.分子プレカーサー溶液はEDTA-Ca錯体のアルコール溶液とリン酸塩化合物をCa/P=1.67の割合で調整して作製した.Tiファイバーとしては,気効率85%,直径2.8mm,長さ6.Ommのシリンダーを用いた.CA薄膜コーティングTiファイバーをBP水溶液(0.005M)に浸漬し,BPを固定化した.BP濃度が高いと,Tiファイバーの周囲にBPゲルが生成することを前年度に見出した.濃度を0.005Mとすると,BPゲルは生成しなかった.動物埋入実験は松戸歯学部動物実験倫理委員会の指針に従って行った(承認番号08-0019).ウサギ(日本白色種,3ヶ月齢)の大腿骨関節内側顆部の海綿骨部に,無処理Tiファイバー,CA薄膜コーティングTiファイバー,BP固定化Tiファイバーを埋入した.埋入12週間後で,病理組織学的に検索した結果,HP固定化Tiファイバーはシリンダー内部で骨形成が良好に起こっており,Tiファイバーへの骨侵入度も最も優れていた.CA薄膜コーティングTiファイバーを埋入した場合でも,無処理Tiファイバーよりは骨形成は良好であったが,BPを固定化することにより,骨形成がより促進された. 以上の結果から,分子プレカーサー法を用いて作製したCA薄膜コーティングにBPを固定化すると,骨適合性が向上することが判明した.BP固定化Tiファイバーは再生医療のための3次元スキャホールドとして有望であることが示唆された.
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