研究概要 |
フェムト秒レーザーによってナノレベルの周期構造とミクロンレベルの溝構造を形成し,その表面上での骨芽細胞様細胞の形態を調べた.周期構造はアブレーション閾値近傍のフルエンスで直線偏光のレーザーをチタン表面に照射し,自己組織的に形成した.一方で,フェムト秒レーザーの持つ高強度に集光できる性質を利用して数μmの溝構造を作成した.周期構造を形成したチタン表面には,溝の深さが約300nmで,レーザーの波長(800nm)に近い一定の間隔で周期構造が形成されていた.しかし,照射幅の制限にのためスキャンの繰り返しの境界面でわずかな周期構造の直線性に乱れが認められた.一方,1ラインずつレーザーを走査させて形成した溝構造では,溝の深さが約6μmで,溝底面の幅が約10μmの直線性に優れた構造であった.また,周期構造および溝構造ともに加工時の熱による融解などの痕跡は認められなかった.骨芽細胞様細胞のMG63細胞に対する細胞接着性には,周期構造および溝構造を付与したチタン表面とも鏡面研磨したチタン表面との間に有意差は認められなかった.アクチン染色によるチタン表面に付着した細胞の形態は,鏡面研磨したチタンでは細胞はあらるゆ方向に伸展していた.これに対して,周期構造および溝構造を付与した表面では周期構造や溝構造の方向に伸展し,配向していた.しかし,周期構造は溝構造に比べて細胞の配向性は減少していた.これは周期構造と溝構造との溝の深さ,溝の直線性や繰り返し間隔などが影響していたと考えられた.
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