研究概要 |
〔具体的内容〕骨欠損部に埋入する足場材料は生体吸収性であることが望ましい.今回,新しく開発された多孔性カルシウム粒子に対する生体内での反応特にアレルギー性と生体吸収性を調べた.実験方法;実験群として多孔性カルシウム粒子(カルシウム粒子10μmCa_3(PO_4)_2,30μmCa_3(PO_4)_2とCaCO_3,60μmCaCO_3)そして同種ラットおよび異種マウスの粉砕大腿骨をpropylene glycolと混和し,対照としてpropylene glycolのみをラット背部の皮下組織に埋入した.埋入後2, 4, 6, 8週で皮下組織を摘出し,病理組織学的に観察した.結果;リンパ球の浸潤はカルシウム粒子の埋入2週から4週後まで多くの例で認められ6週より減少した.ラット骨では2週後に多く4週以降減少したが,マウス骨では8週まで浸潤する例が多かった.マクロファージの浸潤は,カルシウム粒子の場合では2週から4週後で多く例で認められ,6週より減少し始め,8週で認められなかった.ラット骨では2週まで多く4週より減少し,マウス骨では6週より減少し,8週でも認められる例が多かった.異物巨細胞の浸潤は,10μmカルシウム粒子の場合2週で多くの例で認められ4週後から減少,また30μmおよび60μmカルシウム粒子では4週まで多く6週から減少始めた.ラット骨の場合2週まで多く4週から減少し始め,マウス骨では8週まで浸潤する例が多かった.埋入した材料の消失は,10μmカルシウム粒子の場合4週後から消失,30μmおよび60μmカルシウム粒子では6週から消失する例が多かった.ラット骨では4週より消失し,マウス骨の場合6週より消失し始め8週でも認められる例が多かった.結論;多孔性カルシウム粒子は同種同系の骨と同様の組織像が観察されたことからアレルギー性が少なく,生体吸収性であり,その吸収速度は直径の小さな粒子で速かった.以上のことから,これら粒子は骨再生の生体吸収性足場材料の素材として,さらに多孔性を利用して造骨因子を含有する徐放性材料として応用できる.
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