研究概要 |
骨量が減少した顎骨においては,良好なインプラント治療結果を得るため骨の増生が望まれる.そのため,新生骨形成のスペースを確保できる機械的強度を有する足場材料の開発が求められている.19年度から20年度まで,我々は足場材料としてサンゴに焦点をあて,その機械的強度および三次元的な構造を明らかにした.本年度は微細構造を観察し,さらにin vitroでの毛細血管形成能,およびin vivoでの実験的骨欠損部におけるサンゴを応用した骨の増生を検討した.材料と方法;サンゴの骨格の微細構造を走査型電子顕微鏡および原子間力顕微鏡で観察した.また,サンゴ粒子を(pH6~pH8)溶液に浸漬しその溶液中のカルシウム濃度を測定した。さらに、in vitroでサンゴとともに線維芽細胞および血管内皮細胞を共培養し,抗CD31抗体による免疫組織化学的染色を行い毛細血管の形成状態を観察した.In vivoでイヌ大腿骨の実験的欠損部にブロック状のサンゴを埋入し,多孔性フィルターで被覆した.埋入処置後7週にカルセインを投入し,その1週後埋入部の大腿骨を摘出し,共焦点レーザー走査顕微鏡および光学顕微鏡で観察した.結果;サンゴの内部は直径100~300μmの無数の管状構造が外界と繋がり,隣接する孔は管で繋がっていた.骨格の表面は10~20μmの隆起物で覆われ,突起物の表面にはさらに60~200μmの丸みを帯びた無数の突起が観察された.pH6~pH8溶液ではサンゴは溶解し、pH8溶液ではカルシウムを沈着することがわかった。In vitroではサンゴ粒子の周囲に毛細血管の形成が認められた.また,In vivoではサンゴに接して多核巨細胞が観察され,サンゴブロックの内腔に骨芽細胞で縁取りされた新生骨が形成されるとともに,骨の増生が認められた,以上のことから,サンゴブロックは骨欠損部における骨の増生を目的とした生体吸収性の足場材料としての応用が期待される
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