レジン床義歯の補強材に用いるガラス繊維強化型コンポジットレジン(FRC:fiber-reinforced composites)を開発し、義歯へ応用することを目的として、平成19年度は、義歯補強用FRC単体の試作およびレジン床へ補強材として応用する場合のFRCの幅と厚さがレジン床の曲げ強さに及ぼす影響について検討を行った。その結果、ガラス繊維径が20〜45μmのFRC単体が高い強度を示した。さらに、このFRCを短冊型の床用レジン試料に埋入し三点曲げ試験により強度を検討したところ、幅5mm、厚さ1.0mmのFRCを埋入した短冊型の床用レジン試料は、従来の補強材であるメタル補強と同様の強度を示し、厚さを1.5mmに変えると、メタル補強より高い強度を示した。 平成20年度は、この結果を踏まえ、各種の補強材を実際の上顎レジン床総義歯に応用し、破壊試験により各試料の破壊強さを評価した。まず、上顎総義歯のろう義歯を人工歯排列、歯肉形成を行って作製し、レジン填入時に補強線を埋入し、加熱重合レジンで重合して義歯を作製した。完成した上顎レジン床義歯試料は、オートグラフを用い、直径25mmのボールアタッチメントでクロスヘッドスピード5mm/minにて、義歯の破壊試験を行った。その結果、短冊型の床用レジン試料の結果と同様で、幅5mm、厚さ1.0mmのFRCを埋入した上顎レジン床総義歯試料はメタル補強と同様の強度を示し、FRCの厚さを1.5mmに厚くすると、メタル補強より高い強度を示した。以上の結果より、開発したガラス繊維強化型コンポジットレジンは、レジン床義歯の補強材として十分応用可能であり、さらに厚さや幅を変えることにより金属以上の補強効果を示すことが明らかになり、今後の補綴臨床において大変意義のある結果を得ることができた。
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