研究概要 |
(1)二期的口蓋形成術症例の短期的言語成績を評価した。 5歳時の鼻咽腔閉鎖機能は、23/25例(92%)と良好であったが、異常構音の頻度は、18/25例(72%)と高かった。うち口蓋化構音6/18(33.3%),声門破裂音5/18(27.8%)であった。経時的にみると口蓋化構音が残存する傾向があった。 (2)顎裂に隣接する永久側切歯欠損が上顎歯槽弓形態に及ぼす影響を検討した。 上顎永久側切歯先天欠損群は非欠損群と比較して出生時から口蓋形成術時まで顎裂幅は有意に大きかった。永久側切歯が先天欠損している症例では、早期の動的顎矯正より顎裂部空隙を閉鎖することは,上顎歯槽弓の狭小化を招き,将来の顎関係や咬合の改善に支障をきたす可能性があると考えられた. (3)下顎骨をドナーとし、その欠点を補いより大きな顎裂へも適応可能となる顎裂部骨移植法を考案した。 下顎骨から外側皮質骨片を2枚採取し、顎裂部の唇側と口蓋側の開口部にはめ込む。両骨片間には海綿骨細片を充填することはせずに顎裂内は空洞のままとする手法である。本学倫理委員会の承認と患者の同意に基づき、本法の有効性について評価を行った。 ●下顎骨外側皮質骨移植法は、従来の顎裂部骨移植法と同等の骨架橋形成,隣接永久歯骨性支持,犬歯自然萌出の成績が得られた。 ●本法は、顎裂骨欠損部の単位体積あたりの移植骨量を減らすことで、より大きな顎裂への適応を可能とする。 ●骨髄内の海綿骨採取を要しないため、隣接永久歯障害の可能性を回避できる。
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