研究概要 |
平成20年度は,脂肪組織由来の間葉系幹細胞を用いた歯の再生医療を目指し,当教室で樹立したエナメル芽細胞株の生体内の挙動についての検討と歯再生用のスキャッフォールドとしての炭酸アパタイトの有用性の検討を行った. エナメル芽細胞株の生体内の挙動 基底膜成分由来のマトリゲル^[○!R]に懸濁したエナメル芽細胞をヌードマウス背部皮下に移植し,6,20,40週後に試料を摘出して組織学評価および軟X線評価を行った.移植4週後から皮下に小さな結節が形成され,そのサイズは6週,20週,40週と増大していった.移植20週では小さな硬固物が触れ,軟X線写真で散在したレントゲン不透過像が観察された.移植40週では大きな固い組織塊が形成され,レントゲン不透過像が増大し,不透過性は亢進した.移植6週後ではエナメル器に類似した組織が形成され,この組織はアメロジェニン陽性,サイトケラチン14陽性であり,歯由来上皮細胞であることが示唆された.移植20週,40週後の標本では,エナメル器に類似した組織は消失し,無機質が観察された. 歯再生用Scaffoldとしての炭酸アパタイトの有用性 高温での焼結過程なしに結晶性の低い炭酸アパタイト(CAP)を作製し,低結晶性CAPがヒト骨髄細胞の接着,増殖および骨芽細胞への分化に与える影響について検討した.X線回折解析およびフーリエ変換赤外分光光度計分析から,作製したCAPは低結晶性B型CAPであることが明らかとなった.細胞接着はCAPとハイドロキシアパタイト(HAP)の間に有意差はなかった.CAP上での細胞増殖は,7日目まではHAPより遅かったが,10日目では有意差はなかった.骨芽細胞の分化マーカーの発現は,CAPおよびHAP上で培養した細胞は,培養皿と比べて,オステオポンチン,オステオカルシンの発現が5〜10倍上昇していた.以上の結果より,低結晶性CAPはヒト骨髄細胞の骨芽細胞への分化を促進することが明らかとなり,骨再建材料としての有用性が示唆された.
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