本研究はヒト根未完成歯の歯髄細胞から多分化能幹細胞を単離し、その細胞を再生医療、特に骨再生医療へ応用することを目指して行った。平成19年度はヒト根未完成歯の歯髄細胞が多分可能を持ち、硬組織形成細胞に分化誘導した歯髄細胞がin vivoにて骨組織、象牙質組織を形成することが見いだされた。さらには初代培養した歯髄細胞を細胞選択、分化誘導を行わずに、そのままハイドロキシアパタイトスキャフォールドに付着させ免疫不全マウスに移植したところ活発な骨組織形成が観察された。実際の再生医療の臨床応用を考えると安全性、簡便性は非常に重要な問題である。この研究成果は従来の骨再生医療に比べより簡便で安全性の高い方法に発展する可能性が考えられた。 そこで、平成20年度は19年度の研究成果の再現性を得るための実験を行った。10人の患者さんの抜去歯の歯髄組織より初代培養した細胞を細胞選択、分化誘導を行わずにハイドロキシアパタイトスキャフォールドに付着させ免疫不全マウスに移植しin vivoでの骨組織形成能を検討した。10人の患者さんの全ての歯髄細胞が骨組織を形成した。根未完成歯の歯髄細胞だけではなく、根完成歯の歯髄細胞も骨形成能を持つことも確認された。根未完成歯を持つ患者の年齢層は限られているため、根完成歯も細胞供給源になれば歯髄細胞を利用した骨再生医療の可能性が広がる。 また、in vivoでの骨形成には培養培地の種類、血清濃度、移植部位の違いは影響を及ぼさなかった。本年度の研究成果より歯髄細胞は細胞選択、分化誘導を必要せずとも個体差なく、再現性よく活発な骨形成能を持つことが示された。これまでに無い簡便で安全性の高い骨再生医療につながる研究成果であると考えており、臨床応用を見据え今後も研究を進めていきたいと考えている。
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