当科を受診した多発癌、早期癌予後不良症例を中心に、さまざまなtypeのヒトパピローマウィルス(HPV)の感染有無について検索し、さらに、感染typeと病理組織学的分化度や、臨床経過、また予後との関連を検討することにより、より患者に適した効果的な治療法を選択でき、適切な経過観察方法が確立され、さらなる治療成績の向上につながるマーカーになるのではないかと考えている。【研究の目的】、1)当科を受診、加療された早期癌予後不良症例と多発癌症例を対象とし、HPV感染の有無とそのtypeを分子生物学的に検討する。上記1)、を検討したのち、当科で行っている術前病理組織学的悪性度や臨床経過との相関を検索する。コントロールとしてHeLa細胞と乳頭腫症4例の検体を用い、CPI-CPII(consensus primer)とType Specific Primer(HPV16、18、31、33、35、58)7種類の検討を行った。さらに、In situ hybridyzationおよびIn situ PCR法を確立した。その結果、全症例でHPV感染が認められ、Type別内訳では、HPV18が1例、HPV31が3例、HPV33が2例、HPV35が1例、HPV58が1例であった。さらに口腔悪性腫瘍(扁平上皮癌)46症例について検討を行っているところである。46症例の原発巣部位別内訳は、舌が18例、下顎歯肉が8例、頬粘膜が8例、口底が7例、上顎歯肉が2例、口蓋が1例、口峡咽頭が1例、口唇が1例であった。T分類では、T1が3例、T2が30例、T3が2例、T4が11例であり、全症例46例であった。スクリーニングとして43症例について、CPI-CPII(consensus primer)を用いてHPV感染の有無を検索した。その結果43症例中29症例(67.4%)にHPV感染が認められた。
|