HPVの陽性率は、51.9%(41/79症例)であり、他施設の口腔領域で検索されている陽性群(OSCC PCR based : 39.9%)と比較して、高い傾向を示した。また、臨床所見のStage分類では、Stage I-IIが、Stage III-IVに比較して、HPV陽性率が高い傾向にあった。さらに、臨床病理学的所見の癌浸潤様式では、1型が4型よりもHPV陽性率が高く、悪性度においては、低悪性が高悪性よりもHPV陽性率が高い傾向にあった。また、口腔内多発癌は認められなかったが、頸部リンパ節への後発転移が5例に認められ、5例中5例にHPV感染を認めた。原発巣再発では、6例中3例にHPV感染(1例が予後不良例)を認め、他の3例(3例が予後不良例)がHPV非感染であった。さらに、遠隔転移では、2例にHPV感染を認め、2例中1例が予後不良例であった。一方、HPV非感染における遠隔転移は認められなかった。 沖縄県の肺扁平上皮癌とHPVとの関係については、高分化型症例にHPV DNAが多数検出されている。今回我々が行った口腔癌に対するHPV検索の結果、低悪性が高悪性よりもHPV陽性率が高い傾向にあった。また、口腔癌におけるHPV感染と予後との関わりについては、今後、症例数を増やしつつ、継続して経過を検証していく予定である。 現在我々は口腔癌のバイオマーカーであるIL-8産生機構とHPVとの関連について細胞生物学的に解析している. 我々は、炎症反応依存的にIL-8が産生される機序にHPVと生体内の鉄過剰状態が関与していることをすでに見出している。HeLa細胞はHPV18型に感染しており、今後はIL-8産生量とHPVのタイプ別の差異についてHPV16型感染細胞株であるCa-Ski細胞や、頭頸部癌HPV感染細胞などを用いて、さらにHPV感染の有無による口腔癌患者の予後と臨床所見等との関連にについて検証していく予定である。
|