唾液腺癌幹細胞の解析のために初年度はヒト唾液腺より多分化能と自己複製能を備えた幹細胞を解析するためにヒト唾液腺細胞の低密度培養によるクローナルな培養系を確立することを試みた。大学内の倫理委員会承認後、同意が得られた30例について小/大唾液腺細胞を検体とし、それぞれについて低密度培養によるクローナルな培養系を確立した。低密度培養にて得られた単一細胞由来のコロニーについてRT-PCR、免疫組織染色にて唾液腺分化マーカーの発現を解析したところ腺房マーカーであるaquaporin3(AQP3)、導管マーカーであるcytokeratin14(CK14)、筋上皮マーカーであるvimentinの発現が確認された。また、正常唾液腺組織より細胞をコラゲナーゼ/トリプシン処理にて単離し、フローサイトメトリーおよびモノクローナル抗体を用いて細胞の分離を行った。モノクローナル抗体はICAM-1、MHCclassI(OX18)を使用し、ICAM-1、OX18ともに陽性細胞・ICAM-1、OX18ともに陰性細胞・ICAM-1陽性OX18陰性細胞・ICAM-1陰性OX18陽性細胞の4グループに分離し、それぞれについて培養し、増殖活性、コロニー形成能および上述の唾液腺分化マーカーの発現を検討したところ増殖活性、コロニー形成能に関してはICAM-1、OX18陰性細胞分画と比較してそれ以外の分画では細胞の増殖活性・コロニー形成能が高いと考えられたが、マーカーの発現に関しては、いずれの分画においても明らかな唾液腺組織への分化は認められなかった。
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